サイボウズ株式会社 「まずやってみるという柔軟性がポイント」

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サイボウズ株式会社

人事本部 人事部

恩田 志保さん

 

社長室

コーポレート・コミュニケーショングループ

浅野 亜未奈さん

 

 

「成功のポイントはビジョンの共有と共感、それからまずやってみるという柔軟性。」

 

DSCF2774.JPGグループウェアの開発、販売を手掛けるベンチャー企業のサイボウズ。ワーク重視(PS)とライフ重視(DS)という働き方が選択できる人事制度を導入しています。またイクメン社長がいる会社としても注目を浴びています。ご自分もDS制度を利用されている人事部の恩田さんと、社員の相互理解の活性化を図るコーポレート・コミュニケーショングループの浅野さん(PS制度利用)にお話しを伺いました。

 

――両立支援制度や選択型人事制度を導入したいきさつをお教えください。

弊社は1998年、現社長の青野など3人で創業したソフトウェア開発を行うベンチャー企業です。創業当時は数名でしたが、2001年から多くの方に入社して頂き、現在は225名(201011月現在)、平均年齢30歳、男女比率は4614期を迎える会社です。

ベンチャーとしてスタートしましたので、当初は仕事が楽しいから働いているという状態でしたが、人員増加とともに人事制度・評価制度を検討・導入しました。最初は成果主義、6期目からは360度評価などの制度も導入してきました。長く働いていた女性社員が出産、育児のタイミングで出産育児休暇を取る事が多くなり、できればノウハウを持っている社員に戻ってきてもらいたいと考えたからです。

2005年(9期)に社長交代をし、青野が社長となりました。ソフトウェア開発は人が資産。重要な資産が流出し有効活用されていない事に、人事部長の山田も危惧しており、人事制度の見直しを一緒に検討しました。経営陣に危機感があったのだと思います。

 

――御社では特徴的な制度を導入していますが、どんな制度でしょうか?

選択型人事制度というものを導入しています。PS制度、DS制度と名付けでいます。PS

制度は時間などに関係なく成果を重視した働き方でワーク重視となっています。DS制度は所定労働時間をベースとした働き方でライフ重視となっています。DS制度には短時間勤務制度も含まれています。PSは「プレイステーション」で、DSは「ニンテンドーDS」の略で、「PSDSも、どちらが上であるとか、どちらが良いという評価ではなく、人それぞれが好みで選ぶもの。それと同じように働き方も好きな方を選んでください」というメッセージを込めています。

また選択人事制度は

・ライフステージの変化に応じて選択が可能

・職種に制限を設けていない

・男女の区別がない

という特徴を持っています。2007年2月施行しました。

現在、DS制度を利用しているのは19名、男性が5名、女性が14名です。また19名の内8名が短時間勤務制度を利用しており、6名が育児のためとなっています。

子育てや出産などの理由が多いですが、自己啓発のために学校に通いたいと言う事で利用していたケースもあります。この場合も、目的を達成した後にPS制度に戻ることが可能です。

 

PS制度はみなし労働時間制としています。評価方法もいろいろ試みました。360度評価を導入した時期もありましたが、今は直属の上司が部下を評価する方法に戻しています。

DS制度は通常の労働時間制、評価は相対評価で年功型としています。勤怠や仕事の仕方など同じく上司が評価をしますが賃金が下がることはありません。

制度の導入にあたっては何度も説明会を開催し、趣旨を社員に説明し、理解をしてもらいました。

 

――恩田さんはDS制度を使っておられると言う事ですが感想はいかがですか?

DSCF2778.JPG私は入社時に結婚していたため、DS制度がある事が前提で入社をしました。残業がある時もありますが、基本18時に帰る事にしています。勤務時間は9-18時で水曜日は休みとなっています。1週間で32時間の勤務です。

 

もちろん周りも私がDS制度である事は知っていますし、理解してもらっていると思います。最初は周りに気を使って帰れなかった事もありましたが今はスムーズに運用できています。入社時は水曜日に休みを取っていなかったため、1週間で40時間の勤務でしたが、その後短時間勤務になることによって、以前よりも周りとのコミュニケーションが密になったような気がします。また時間を区切って働くことで効率が良くなったとも思います。もちろん家族と過ごす時間が多くなった事は事実です。

勤務時間を短縮するにあたり、自分のやっている事を周りに見えるようにしました。(見える化)マニュアル化とか、仕事を後輩と共有したりもしました。

私は最初から制度ありきで入社したので、DS制度で就労していますが、誰でも生活のパターンが変わると仕事の仕方も変わらざるを得ないのではないかと思います。女性の場合は結婚、妊娠、出産、育児と大きな変化ありますが、男性も育児などを手掛けるケースも出てくるのではと思います。

 

制度を使ってみて、いやな思いをした事はありません。逆に周りに支えられている事を実感しました。また後輩の仕事の幅が増えるのも良い効果だと思います。同じDS制度でも1日の勤務時間が短い短時間勤務を選択している人のほうが、パッと帰っているようです。子供のお迎えなどやる事が明確にあり、それを周囲が理解しているためだと思います。

私は他社にもお勧めできる制度だと思います。

 

――テレワークを試験的に導入したようですがいかがでしたか?

DS制度を利用する立場で使いました。正直な感想としては結構きついと感じました。他の社員と一緒にいない分、時間に見合った明確な成果を出さないと行けないというプレッシャーがありました。また働く場所がちがうのでコミュニケーションや気の使い方など、通常の働き方と質が違うので緊張してしまいました。時間にコミットして働くDS制度よりは、成果にコミットして働くPS制度に近い感覚があるように感じました。

生産性の向上という目的には効果があるように思います。

 

――両立支援制度も充実しているとの事ですが。

はい、一般的なものは一通り導入しています。特徴的なものとしては

・介護休業:最大6年間回数を問わず休業できます。まだ実績はありません。

・育児休業:子供が小学校に就学するまでの期間、何度でも休業できます。長期でフルに利用する社員もいますし、直ぐに戻ってくる社員もいます。20106月現在、取得者は16名。内男性は1名、2回目取得者は3名です。

・看護休暇:子供の看護で会社を休む事ができる休暇。配偶者や両親の看護にも利用したいという要望があり、看護の対象となる家族を、子供だけではなく同居家族等にも広げました。利用する社員が多い状況です。社員からあがった要望を実現したケースです。

 

社員の声を反映して随時、変えてきています。要望を取り入れて変えていくという姿勢があるので、これがいろいろな要望が出てくる風土になっていると思います。

 

――今後の施策などをお教えください。

【より多くの人が、より成長して、より長く働いて欲しい】という考え方はまったく変わらないと思います。ノウハウの蓄積や生産性の向上につながりますから。その観点から考えると、働き方の多様性を実現した選択型人事制度は非常に効果をあげていると思います。特にDS制度は、出産・育児を行う社員の増加に伴い、利用者も徐々に増えています。逆にPS制度で社員の健康管理が気になります。PS制度は自己管理のできる人を前提とした制度になりますが、特に若い人で、成果にこだわるあまり、自ら健康管理ができないケースがあるのでは、と感じています。教育やメンタルケアの両面から制度を考えたいと思います。ただ、自己管理が十分に行える中堅以上の社員については、社員が制度をうまく利用しており、管理を厳しくすることで逆に働きづらくなるのではないかという気もしています。

 

テレワークは福利厚生ではなく、生産性を上げるためという考え方が必要だと思います。またテレワークに限らず今後導入する施策はすべて経営に結びついていかないと難しいとも思っています。結果がでないと辞める制度も出てくる可能性もありますが、まずはやってみて、結果をチェックしてよりよい形に変更して行くという事の繰り返しが重要だと思います。

 

―――成功のポイントはどの辺だと思われますか?

まずビジョンが社内で共有されていることだと思います。また弊社ではAction5(役割を遂行するための行動規範)という考え方があります。『理想への共感/あくなき探求/知識を増やす/心を動かす/不屈の心体』の5つ項目によって構成されています。具体的にはモチベーション創造シートを作成します。仕事とプライベートの両面から、自分の5年後、10年後について研修の席で発表します。これらを上司と共有しており、この辺が結果的に共感にもつながっていると思います。

 

あと、コミュニケーションですね。トップ自身の思考と会社が若いということもあって、前向きな意見を言う風土があると思います。またトップや人事もその意見を聞き入れて、検討・実行していきます。私も意見を聞こうと思っています。独りよがりにならない事を心がけていますし、メッセージを伝えようという気持ちでいます。またメッセージを伝える事を重視し、今年からコーポレート・コミュニケーショングループができました。今までは広報として外部への発信を中心にやっていましたが、社内に発信するというミッションを明確に持つようにし、遂行しています。

 

企業風土だと思いますが、まずやってみるという行動力と柔軟性でしょうか。チェックをして結果が出なければ直ぐに修正をかけるという事を常に行っているのが、社員にも支持をされる制度や施策を生んでいるのだと思います。

 

 

――今回はいろいろ貴重なお話をありがとうございました。今後のご活躍を祈念しております。

 

 

DSCF2780.JPG今までの事例研究は、大企業で歴史がある会社を中心にインタビューをしてきましたが今回は若くまたソフトウェア開発という、フラットな組織を受け入れやすい人たちが集まった企業のインタビューとなりました。

 

青野社長ですが、インタビューの前にあるセミナー(イクメン)でお話しを聞く機会がありました。仕事が大好きでライフはそっちのけのバリバリタイプとご自分ではおしゃっていました。確かに26歳の時に起業し、39歳の今40億円の売り上げを上げるまでに成長した企業のトップということを考えると理解できる部分です。

 

今までお話しを伺った企業様とは違い、プロジェクト化するとか、特別なものとしての扱いはせず、企業の成長、事業の継続をベースに通常の仕事として捉えてやっておられました。いろいろな施策を次々に企画・実施してきており、それが結果的にワーク・ライフ・バランスな環境を生んでいるのだと思います。

 

 

ひとつ印象に残ったのは恩田さんのコメント。「DS制度が前提で入社をされていますが、家庭環境が変わった場合などに、PS制度への移行を検討されますか?」と質問をしたとき、その気はまったくないとおっしゃっていました。PS制度に移ると必要以上のプレッシャーを感じてしまい、うまく回るとは思いませんとの事でした。

とかくワーク・ライフ・バランスをワークハード、ライフハードと位置付けて話をしてきた私にとっては考えさせられました。バランスのとり方は人それぞれ。ライフ重視の働き方もワークにもいい影響を及ぼすのだと言う事を知ることができました。

 

最後に恩田さん、浅野さんともに会社が好きという言葉を頂きました。会社(トップ)の考え方に共感し働いている人の強さを感じました。ありがとうございました。

 

 

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プロフィール

ワーク・ライフ・バランスコンサルタント 羽生田 清
ワーク・ライフ・バランス実現に貢献するため、導入支援サイトWLB-is(ウィズ)を立ち上げました。
「優れた個人の力」と「優れた組織」で時代を生き抜く活動の支援をさせて頂きます。