株式会社富士通ワイエフシー 「社員をお客様と思う事がポイント」

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株式会社富士通ワイエフシー

ワークライフバランスセンター

社員LCM推進室

室長 法林 佳世さん

 

「成功のポイントはトップの理解と推進力。それから社員をお客様と思い行動する事。」

 

horin.JPGテレワークの普及率が対象社員の35%におよぶ株式会社富士通ワイエフシー。100%の申請率を目指すだけでなく、テレワークシステムの販売や導入コンサルティングなどのビジネスも展開。また多くの施策を実施し、詳細をワークライフバランス白書としてホームページで公開中。そのきっかけを作り、今はワークライフバランスセンター 社員LCMLife Cycle Management)推進室 室長となった法林さんにお話を伺いました。

 

 

――ワーク・ライフ・バランス推進活動を行なった経緯をお教えください。

2つの大きな流れがあります。まずは私に関してですが、日頃から会社の女性が辞めていくことを止めたいと考えていました。そんな中、研修の一環で(社)神奈川県情報サービス産業協会で当時ベネッセ㈱の役員をされていた金城様のセミナーを聞くことができました。私が実施したかった、どうすれば妊娠しても働けるのか、また上司はどうしたらそのような社員をうまくマネージメント出来るのか、がテーマで、「母性保護措置」のホームページをイントラネット上で公開しているとの事例を伺いました。金城様に事情をお話して、弊社内でも使わせて頂く事を快諾頂き、YFCの社内規定に合わせて社内サイトを作りました。当時は人事ではなく法務関連の仕事(その前はSE)をしていたのですが、全くのプライベート、ボランティアで進めていました。作っただけではなく活用してこそ価値があると思い、会社に公開したいと申し出ましたが、前例がないという事で保留になっていました。

 

もうひとつの流れが、弊社社長の宮浦。20056月に(富士通から)赴任してきたのですが、9月に右足首骨折で約2カ月入院することとなってしまいました。就任した直後で本来であれば、改革や実務の指揮を取らなければならないのですが、直接動くことができなくなってしまいました。そんなアクシデントの中、役員や社員が会社を回しておりましたが、けがの回復も早く、無事退院する事ができました。これを機に、会社は全社員の力で回っていることを感じ、家族として見ていきたいと思ったようです。奥様の献身的な行動が大きかったのだと思いますが、仕事が100%だった人が家族の重要性を痛感したとの事です。赴任してきて常々、幹部社員に女性がいないことになど女性の活躍が少ないと考えていたようで、女性活躍は実施したいと考えていたようです。

 

そんな中、この2つが私の1通のメールで繋がりました。私は1年間、「母性保護措置」の社内サイトの公開が保留になっていましたのでこの機会に公開出来ないかと社長に直訴したところ、良いことだから公開しなさい、ということで公開にこぎつけられた事がきっかけでした。

 

社長はもともと社員の声を良く聞いていました。車座という集まりがあります。同期会のような集まりで、幹部を入れないで社長と社員がアルコールを片手に話し合う場があるのですが、いつもアンテナを張っていたのだと思います。

 

当初はワーク・ライフ・バランスとかテレワークという考えはまったくありませんでした。この直訴が社長を動かし、他に改善要求を提案する女性がいるのではと社長が考え、女性社員の声を吸い上げる目的で、女性活性化プロジェクトを20061月にスタートさせました。

 

――具体的にはどのような施策を実施されていますでしょうか?

発足後、20064月に6名、その後2名を追加して合計8名で本格始動となりました。管理部門、開発部門、営業部門、各現場の女性社員を集めましたが、総務部は入っていません。総務に女性社員がいなかった事もありますが、総務部の部長にフォローはして頂いていたので、現場の女性を中心にして運営しました。

 

まずは意見を吸い上げたいという事で動きました。プロジェクトではまず、アンケートを使った意識調査やフォーラムを実施しました。アンケートでは80項目を超える改善要望が上がりました。上げてもらっただけでは終わらないので要望毎に対策を実施していきました。プロジェクトメンバーだけでは十分な対応ができないため人事、労働組合を交えて実行していきました。

 

要望には環境改善や制度変更だけでなく、キャリア形成のために何かしてほしいなどの要求がありましたので専門家に講演をお願したり、ロールモデルがいないこともあり、他社の女性役員に来て頂きセミナーを開催しました。

 

――御社はテレワークが特徴ですが、

調査の中で2番目に多かったのがワークスタイルの変革でした。他社が導入をし始めていたのでこれは良い解決策ではないかとテレワークに着目しました。ワークスタイルの変革が目的でしたので、働きすぎない施策ということを念頭に検討をしました。20068月にテレワークに着目、調査・検討の後10月にスタートしました。素早い対応で息つく暇もない状況でした。

テレワークをする上で工夫したことは、中間管理職のマネージメント。いろいろな不安材料がありました。"目の前に部下がいないので管理ができないのではないか"、"評価ができないのではないか"、"残業が多くなり、仕事のし過ぎになるのではないか"などがありましたが、試行錯誤を繰り返し導入に踏み切りました。

たとえば部下がいないことへの不安については、仕事を100%テレワークで行うという環境は望ましくないと判断し、週2日は出社、あとの3日は自由(テレワーク)にすることとしました。また自由な部分も上司との話し合いを行い、双方納得した上でテレワークを実施することとしました。勤怠管理という面では仕事の始めと終わりには電話やメールなどで報告することとしました。テレワーク中は連絡がつく状態になければならないとし、内線電話としても使えるPHS電話を貸与しています。お客様からは会社や部門の代表番号に電話がかかってきますが、その時は内線電話に転送しています。

 

残業をしないのが原則でしたが、仕方がない場合には上司と話し合いを行い認めることとしました。みなし労働ではなく通常勤務形態にしたのは、働き過ぎない施策であることが大前提であったためです。

評価に影響があるのではないかとの不安がありましたが、これについてはテレワークに福利厚生のイメージがあることが要因と考え、テレワークが経営戦略であることを繰り返し周知し、テレワーク実施の有無で評価に差がないことを社長に表明してもらいました。

 

ワークスタイルの変革として、場所の自由度についてはテレワークで実現できましたが、時間の自由度の要求も出てきており、これについては半日テレワークを導入しました。計画性を重視し、申請により行われています。遅刻の振替など本来の目的ではない利用は認めていません。

 

テレワークを実施するには自己管理が必要だと判断し、最初は対象者を限定しました。今年度からは全社員を対象にしましたが最初、対象(年齢)を絞った事は良かったと思います。どうすればいいのかわからないうちに広げるのではなく、ある程度の経験を積んでからの方が効果も大きいと思います。

 

―――女性活性化プロジェクトから全社活性化へと広げましたね。

200610月からワークライフバランス推進室を設置しました。

80項目の改善要望の分析の結果、ワーク・ライフ・バランスに関する要望もあり、この考え方を導入することとしました。組織としてはワークライフバランス推進室の下に、女性活性化プロジェクトがある形です。現在はワークライフバランスセンターとして12名の体制ですが、社員教育関連の部隊が多く、ワーク・ライフ・バランスの企画、実行部隊は2-3名で、いかに徹底するかを常に念頭において推進しています。トップダウンはあってもすべての人が肯定的というわけではありませんので、翻訳者というか中を取りもつ事は必要だと考えます。

 

正直な話、女性活性化プロジェクトの活動をしていく時に男性社員からの逆風もありました。だた、それが全社活性化に広げた直接の要因ではなく、会社を元気にするにはひとりひとりの能力を高める事が必要でそのためには男性も女性もありませんから。

 

今、弊社では個人個人の目標管理シートを各自に作ってもらっています。表は仕事に関する事ですが、裏はライフに関する目標を記入してもらっています。ワークとライフの両方に目標を持ってもらい毎日を過ごして欲しいと考えたからです。ただしライフに関しては任意としています。年齢が上の方からは不評ではあるのですが、若い人からは好評です。気付きになったと言われています。

 

私たちは当初、女性をターゲットにスタートしましたが、振り返ってみると最初から男女をターゲットにした方が良いと思います。またワーク・ライフ・バランスは福利厚生という感覚ではなく経営戦略と捉えて取り組んでほしいと思います。今後は外国人の方も対象になるので、最初から取り入れていってほしいと思います。

 

3.JPG―――ワーク・ライフ・バランスを導入して変わった事はありますか?

私の経験ですが第1子を出産するときは施策実施前、第2子の時は施策実施後でしたが産休中の不安や仕事復帰に対する不安が明らかに違いました。責任は重くなりましたが、不安がなくなり、子育てを楽しめました。

採用に関しては、非常に有利になったと思います。テレワーク制度などのワーク・ライフ・バランス施策に取り組んでいる会社であることを意識・認識した上で応募して来て頂いていると思います。この傾向は女性ではもちろんですが、男性にも言えることだと思います。

あと、富士通グループとして見た場合は、テレワークの会社というイメージが付き、一つのポジションを得たと思います。グループとしてはコミュニティーベースの横断的な付き合いはありますが、組織としての関連はそれほど濃くありません。弊社独自の施策を実施することで、将来的にグループ全体のモデルとしてもらえればと思っています。

 

―――今後の方向はいかがでしょうか?

20107月から広い意味としてとらえるようになりました。入社してから退職(定年)までを活き活きした働き方をして欲しいと考えており、サポートする部署名も「社員LCMLife Cycle Management)推進室」としました。今までは標準(ベース)を押し上げる方向で動いていましたが、いろいろな理由がある方(メンタル的な問題、介護などの家庭環境の問題等)にも注目して行きたいと思っています。

それから、教育に力を入れていきたいですね。ワーク・ライフ・バランスが福利厚生ではなく経営戦略であると認識・納得して自主的に活動して欲しいと思っています。

今後の大きな施策ですが、業務の効率化を図りたいと思っています。弊社はIT関連企業でお客様のシステムの開発や保守を行っていますが、どちらかというと残業は他社に比べ多いのではないかと思います。ライフを充実させるためには労働時間を少なくし、ライフに向ける時間を作っていかなければなりません。平均労働時間は2008年が2,109時間でしたが、2010年には1,900時間、2012年には1,750時間に持っていきたいと目標を掲げています。最近、残業が多い人をピックアップしてヒアリングキャラバンを実施しました。それもあり、今年は減ってきたように思います。メンタルヘルスとも関連していきたいと思います。がんばれなかった人にも手を差し伸べる事をしていきたいと思います。

 

当初は80項目の改善要求に対策を打つことで精いっぱいでしたが、これからは事象がおこることを事前に防ぐ形の「予防」としての施策を企画、実施して行きたいと思います。これからなので「思い」はありますが大変だと思います。

 

―――最後となりますが成功のポイントはどこだと思われますか?

社長の理解と推進力が一番大事ですね。社長が動くとテレワークの普及率がぐっと上がります。社長自身も目標を決めて動く事が大好きですし、会社としてもその風土があると思います。

それからスピードが大事です。まずはやってみるという精神ですね。PDCAを早く回し修正するようにしています。社長は言い訳して取り掛からないことに対しては非常に厳しい態度を取ります。このようなバックアップ、後ろ立ても助かっています。

 

組織化されある程度施策が浸透してきた現在は、「社員がお客様である」という考え方が重要だと思うようになりました。そのためにいろいろ工夫をしていますし、今後も続けたいと思います。

 

――今回はいろいろ貴重なお話をありがとうございました。今後のご活躍を祈念しております。

 

 

富士通YFCさんのケースですが、ボトムアップのタスクフォース型だと思います。一人の社員(法林さん)が社長を動かし、進めた形です。もちろんトップの影響は大きいのですが、トップがメンター役に徹する部分と前面に出る部分と両面をうまく使われていると感じました。インタビューにもありましたがスタート当時はワーク・ライフ・バランスという考えもなく、現状分析の為、改善要望のアンケートを実施したり、ヒアリングを行ったり手探りだったのだと思います。ただ、「思い」は一級品だったのではないでしょうか。1通のメールがなかったらまた違った展開になっていたかもしれません。

変革を行う際に、ビジョンを作成すると良く言いますが、「信念」、「思い」が人を動かし、ビジョン作りを推し進める原動力になったケースとして、貴重なお話を聞かせて頂きました。

 

今後について、残業時間の削減を行いたいと言われていました。何に先に手をつけるかという事では、残業時間の削減を後にしたケースとして参考になると思います。ただテレワークという象徴的なワークスタイルの改革が最初にありましたので、他社の残業削減施策と同様にテレワーク導入が大きなインパクトを与えていたのかもしれません。

 

あとYFCさんは数値が多く出てきます。ホームページにも白書という形で目標や実績値を公開しています。他社も公開はしているところはありますが、ここまで調査をし、公開しているのは珍しく、素晴らしいと思います。

 

最後に個々の社員の年齢、ワークスタイルを考え、LCMLife Cycle Management)という考え方をお持ちの宮浦社長と「がんばれなかった人」という言葉を使われた法林さんのお二人の家族、人に対する優しさが伝わってきたインタビューであったことを付け加えさせて頂きます。ありがとうございました。

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プロフィール

ワーク・ライフ・バランスコンサルタント 羽生田 清
ワーク・ライフ・バランス実現に貢献するため、導入支援サイトWLB-is(ウィズ)を立ち上げました。
「優れた個人の力」と「優れた組織」で時代を生き抜く活動の支援をさせて頂きます。